Blue river ブルーリバー 


ワナカ湖に注ぐマカロアリバーの支流に、ブルーという川がある。
名前からして、いい川を想像する。
あるガイドブックには、「マカロアリバーとの合流に、
魚が上ることができないゴルジェがある」と書いてある。
他のガイドブックには、「上流に大きなニジマスがいる」と書いてある。
どちらかと言うと、ニジマスがいるなら行かないと気がすまない。
地形図をにらんでみた。
程よい規模の川で、フライフィッシングには適していそうな流れ、
確かにマカロアリバーとの合流に、
谷が極端に狭まったゴルジェがあるのが地形図からわかる。
でもそのゴルジェは、2kmほどで終わり、その上はなだらかそうな谷が広がっていた。
そして、合流から山に入るトレッキングコースが、そのなだらかな谷へと通じていた。
歩いても1、2時間なので、「ちょっと行って見よう」もしかしたら…と期待して、
02年1月9日リュックに昼飯、釣り竿片手に上流を目指した。

合流のゴルジェがブループールという、ちょっとした観光地になっていた。
駐車スペースがあり、サンダルで行けるような、しっかりとした道ができていた。
残念ながら、前日からの雨で、ブループールも青白く濁っていた。
産卵期になると下流から大きなブラウントラウトとニジマスが上ってきて、
青い水の中で、悠々と泳ぐ姿が見られる。と説明が書いてあった。
そして今は産卵期でもなく、水は白く濁っている。
観光はほどほどにして、上流へと山道を進んだ。

足で踏むと、10cmは沈む深いコケが地面を覆い尽くし、
雨が滴る木々の表面までもコケが覆う。
枝からはカーテンのようにコケがぶら下がっている。
見上げるよなシダのお化けや、怪しい鳴き声の鳥。
南島西側特有のシダとコケに覆われた森は、マスが澄む川というよりは、
熱帯雨林のジャングルだ。
パンツいっちょで槍を持った、色黒の原住民が襲ってきそうなそんな雰囲気だった。
そんな森はシャワーをあびて、ツヤツヤと光り、巨大なスポンジのようにしっとりとしていた。
雨が教えてくれた森の美しさだった。

         
             
スポンジのような森は、青く清い水を作る

1時間半歩きようやく河原に下りることができた。
水は澄んでいて、よさそうな流れが広がっていた。
早速支度を終え、魚を捜してみたものの、どこにもいない。
魚がいてもよい流れはあるのに、一尾も見当たらない。
さらに500mも釣り上がったら、谷は狭まり、石が巨大になって、
行く手を阻まれてしまった。
「このゴルジェを越えれば、川が安定して魚がいるのでは?」
「湖育ちの大きな魚が上流で私を待っているのでは?」
ちょっと後ろ髪引かれるところもあったけど、
「ハイキングに来たんだ」。ともう一人の自分が勝手に主張し、
昼飯を食べて、ブルーリバーを後にした。
魚には出会えなかったものの、魚を育む森に出会えた。
そんな感じに一日をまとめた、雨の釣りだった。
魚が釣れなくても、角度を変えて自然を楽しむ。
ジャングル、ジャングル。バンザイ。

02年1月12日クルーサより


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